歯科医師国家試験の合格基準・ボーダーをわかりやすく解説

  • 公開日:2023.06.09
  • 更新日:2024.04.11
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歯科医師国家試験の合格基準・ボーダーをわかりやすく解説
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第116回以降の合格基準

これから歯科医師国家試験を迎えるあなた、

また、国家試験が終わったばかりのあなたは、

「正直、合格基準がよく分かっていない。。。」
必修・一般・臨実問題の違いって?」
模試の成績表ってどう見ればいいの?」
親が合格基準を気にしているけど、教えるのが面倒」

といった疑問や悩みをお持ちではありませんか?

合格基準については、今さら周りの友達に聞くのも気が引けますし、ネットで検索しても難しい内容ばかりで読む気が起きませんよね。

歯科医師国家試験は単純に◯点取れれば合格といった試験ではなく、複数設けられた合格基準をクリアすることが必要です。

しかし実は、合格基準はただ知っているだけでは意味がないのです。

合格基準を制する人が試験を制するとも言われているように、合格基準を隅々まで理解して自分のものとすることで、それに沿った対策ができ、試験当日でも時間配分や配点を気にしながら問題を解いていくことができるのです。

そこでこの記事では、合格基準そのものの解説だけでなく、使われている用語から合格基準に即した効率的な勉強法までを詳しく解説します。

あなたがこの記事を読めば、国家試験の問題の見え方や勉強法が変わり、合格へと一歩近づくでしょう。

ぜひ、最後まで目を通してみてください。

1章:歯科医師国家試験の合格基準

この章では、歯学部の1〜5年生や受験生の親御様など、歯科医師国家試験の合格基準を初めて見る方でも理解できるように以下の順番で説明していきます。

・合格の判定基準
・合格基準を理解するために必要な用語
・各問題の配点
・過去の合格基準との比較

もし既に知っている内容があれば、必要なところだけでもぜひ読んでいってください。

1-1:合格の判定基準

合格の判定基準

冒頭でも申し上げた通り、歯科医師国家試験は100点満点中◯点を取れれば合格という試験ではありません。

簡単に説明すると、第116回以降の歯科医師国家試験は、

  • 必修問題 80 題
  • 一般問題(総論)100 題
  • 一般問題(各論)80 題
  • 臨床実地問題(各論)100 題

の計 360 問から構成されており、

  • 必修問題は80%以上の正答率
  • 領域A(総論)・領域B(各論)はそれぞれの平均点と標準偏差を用いて設けられた基準点以上の得点

という合格基準が設けられた試験です。

この合格基準を初めて見る方は、「必修の正答率80%はなんとなく分かるけど、領域A・Bの標準偏差って何…?」となるのではないでしょうか?

この複雑な合格基準が設けられている背景としては、「偶発的な要因での合格を避け、真に歯科医師としての知能および技能を有する受験生を選別するため」とされています。

言い換えれば、「勘でマークした数問がたまたま合っていた」などの理由で、真剣に回答した他の受験生が不合格になってしまう可能性をなるべく減らすためということです。

そこで、ここでは合格基準を理解する肝となる

・絶対基準と相対基準について
・必修問題の得点率
・2領域(総論・各論)の得点数

について解説していきます。

分からない単語が出てくる方は、後述の1-2: 合格基準を理解するために必要な用語をご覧ください。

1-1-1:絶対基準と相対基準について

歯科医師国家試験の合格基準を理解する上で重要な考え方が「絶対基準」と「相対基準」です。

絶対基準とは・・・あらかじめ決められた基準を達成できたかどうかによって判定する方法

相対基準・・・集団内の他者との比較によって、相対的に判定する方法

分かりやすく言うと、絶対基準は「80点以上ならば合格」のようにあらかじめ基準点を決めておくこと相対基準は「100人中、上位20人が合格」のように個々人の得点数によらず、あらかじめ評価の枠を定めておくことです。

歯科医師国家試験では、この2つの基準どちらか一方ではなく、両方の基準が用いられていことが特徴です。

1-1-2:必修問題の正答率

全80問で構成される必修問題は、総得点の80%以上の得点が必須という絶対基準が用いられています。

つまり、必修問題の合格基準をクリアできない場合は、その他の領域でどれだけ得点していようと不合格となってしまうということです。

このように絶対基準を用いる必修問題は、年度ごとに受験生の平均正答率があまり変動することがないよう、難易度が綿密に計算された上で作問されています。

毎年「必修で1点足りずに落ちた」という受験生が多発するように、出題範囲が膨大かつ平均点が80%前後となるように難易度調節された必修問題を確実に得点するということは、思いのほかハードルが高いのです。

1-1-3:領域A・Bの得点数

第116回以降の歯科医師国家試験では、一般問題と臨床実地問題で構成される領域A(=総論)と領域B(=各論)のそれぞれで、相対基準を用いた基準点が設けられます。
※第115回までは領域A・B・Cの3領域に分かれていました。

たとえば、合格発表時に

  • 領域A(総論) 58点以上/100点
  • 領域B(各論) 244点以上/380点

というような基準点が公表され、前述の必修問題の正答率80%に加えて、領域A・領域Bそれぞれの基準点を満たしていれば晴れて合格となります。

参考までに、この基準点を算出するためには「平均点」「標準偏差」が用いられています。

詳しい説明と計算方法は省きますが、例えば100点満点の試験の平均点が50点だった場合に、個々の受験者の得点が平均点付近に固まっているのか、幅広くバラついているのかをみる指標が標準偏差です。

この指標を用いる理由の1つとしては、領域A・Bを構成する一般問題と臨床実地問題は、正解が複数の選択肢からなる問題形式が採用されていることもあり、必修問題とは異なって平均点や得点のバラつきが年度ごとに変動し、合格基準点を設定すべき位置が毎回変わってくるためです。

1-2: 合格基準を理解するために必要な用語

歯科医師国家試験の合格基準を理解する上でまずハードルとなるのが各種用語の意味です。

これから歯科医師国家試験を受けようとしている方や受験生の親御様にとっては、初めて見るような用語が出てくると思いますので、ここでしっかりと理解しておきましょう。

1-2-1:必修(必修問題)

歯科医師国家試験制度における必修とは、「歯科医師として必ず具有すべき基本的最低限度の知識及び技能」とされているように、歯科医師として必須の基本的な知識を問うものを必修と定義しています。

この必修を扱う「必修問題」は全80問から構成され、問題形式は「Aタイプ…選択肢の中から1つ選べ」と、「X2タイプ…選択肢の中から2つ選べ」が採用されています。
※X2タイプは第116回より採用

必修問題は単純な知識のみで解答できる問題が多く、過去問の似た問題や基礎的知識に対しての暗記力や瞬発力が問われます。

しかし、中には見慣れない問題や即答できない問題ももれなく含まれているため、それらを瞬時に見分けた上で、論理的思考力によって答えを導き出すことが必要です。

 1-2-2:総論・各論・領域

ここでは、意味が混同しやすい「総論・各論・領域」を説明します。

「総論」とは、「歯科医学総論」に該当する範囲のことを指し、総論を扱う問題は全問題数のうちおよそ30%を占めています。

総論の構成としては、

総論Ⅰ 保健・医療と健康増進
総論Ⅱ 正常構造と機能、発生、成長、発達、加齢変化
総論Ⅲ 病因、病態
総論Ⅳ 主要症候
総論Ⅴ 診察
総論Ⅵ 検査
総論Ⅶ 治療
総論Ⅷ 歯科材料と歯科医療機器

の8つとなります。

ですが、総論を細分化して理解する必要はあまりなく、全科目の中から「必修の基本的事項」を土台として構成される、歯科医師として必要な専門的・臨床的知識及び技能を問う問題、と捉えておきましょう。

一方で「各論」とは、具体的な科目・分野に特化、かつ発展的な内容が含まれた範囲のことを指します。

各論の構成としては、

各論Ⅰ 成長・発育に関連した疾患・病態
各論Ⅱ 歯・歯髄・歯周組織の疾患
各論Ⅲ 顎・口腔領域の疾患
各論Ⅳ 歯質・歯・顎顔面欠損と機能障害
各論Ⅴ 配慮が必要な高齢者・有病者・障害者等に関連した疾患・病態・予防ならびに歯科診療

の5つとなります。

一般的に「臨床系科目」と呼ばれる小児歯科学・歯科矯正学・歯科保存学3科・口腔外科3科・歯科補綴学・高齢者歯科学を中心とした、より臨床に近い科目が各論の大部分を構成しています。

最後に「領域」とは、上記の「総論・各論」のように学問系統を表した用語ではなく、単なる国家試験制度における出題上の区分を表す単語です。

第115回試験までは、領域A=総論、領域B=各論Ⅰ・Ⅱ、領域C=各論Ⅲ・Ⅳ・Ⅴと区分されておりましたが、第116回からは、総論=領域A、各論=領域Bとシンプルな区分に変更されました。

 1-2-3:一般問題

一般問題とは、性別・年齢などの条件提示がなく、疾患や病態などの与えられたテーマについての知識を問う問題を指します。

必修問題のような暗記でも対応できる1問1答の問題形式に比べ、一般問題は総論・各論の範囲それぞれから疾患の基礎的な知識を問う問題が満遍なく出題されるため、あやふやに覚えている場合は誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。

また、一般問題で問われる知識の理解が浅い状態では、臨床実地問題の得点力に大きく影響してきますので、過去問を中心にしっかりとした対策が必要といえます。

 1-2-4:臨床実地問題

「臨床実地問題」とは、患者の性別や年齢、実際の症例などの具体的な条件提示に対して、臨床実習で培った問題解決能力や思考力を問う問題を指します。

この臨床実地問題には1問3点の高配点が与えられていることから分かるように、歯科医師国家試験では、実際の臨床で遭遇する可能性の高い問題に対処することができる歯科医師を選抜するための試験ともいえます。

余談ですが、現代の歯科医療の現場では、高性能な医療機器を活用できるようになった結果、治療の質が歯科医師の腕に大きく依存するようなことが減ってきています。

そのような時代の変化から、患者当人の訴えや自分の目や耳で得た情報から疾患を診断し、適切な治療方針の提示ができることが、現代の歯科医師に本当に求められる能力になったという背景があります。

このように、それらの能力を短い試験時間内で見極めるための問題が臨床実地問題となりますので、基礎的事項を確実に抑えた上で論理的思考力を養い、一見ひねられた問題にも対応できるような対策が必要となります。

1-2-5:削除問題・不適切問題

歯科医師国家試験は、必ずと言っていいほど「正解が存在しないor正解が1つではない問題」や「試験として適切でない問題」などが数問出題されてしまいます。

このような問題は一般的に、削除問題・採点除外問題・不適切問題などと呼ばれ、合格発表時に合格基準点と同時に公表されます。

これらの問題に対する採点方法としては、

  1. 採点対象から除外する
  2. 複数の解答を正解として採点する
  3. 正解した受験生はその問題を採点対象に含め,不正解の受験生についてはその問題を採点対象から除外する

の3つの対応がなされ、自己採点の時点で必修問題が80%に満たなかったような受験生にとってはプラスに働く可能性があります。

そもそも、なぜこれらの問題が出題されてしまうかというと原因は3つあります。

1つ目は単純な出題ミスによるものです。
歯科医師国家試験は、プロ中のプロである大学教授等の先生方が作問を担当していますが、もちろん人の手によるものなのでミスが起きてしまいます。つまり、シビアな難易度の調整が求められる国家試験の作問はそれだけ難しいということです。

2つ目は、試験後に日本私立歯科大学協会などの団体から提出される「要望書」の中で「試験として不適切と思われる問題」について指摘がなされ、厚生労働省内で検討を行った結果、削除問題・不適切問題などと認定されることです。

3つ目は、事実は公表されていませんが、必修問題の難易度が高すぎた結果、必修問題の合格基準である80%を得点する受験生が想定より少なかった場合の調整弁として、正答率が低かった問題などをあえて不適切問題とし、採点から除外するなどの対応が行われることが挙げられます。

 1-3:各問題の配点

歯科医師国家試験の問題の配点は

必修問題 80問 各1点 計80点
一般問題 180問 各1点 計180点
臨床実地問題 100問 各3点 計300点

合計 360問 計560点

となります。

これらを合格基準の各領域別で見ると以下の通りです。

合格基準の各領域別

仮に領域Bの一般問題が全問解けたとしても、配点の大きい臨床実地問題を多く落としてしまった場合は、合格基準を達成することが難しくなるため注意が必要です。

 1-4:過去の合格基準との比較

日本における歯科医師国家試験制度は、1947年(昭和22年)の第一回試験から正式に始まり、当初はペーパーテストに加え技能試験が課されていました。

その後、歯科大学や大学の歯学部などが順次創設されることに伴う受験者数の増加や、より質の高い歯科医師が求められるに従い、数々の試験制度の変遷を経て現在の合格基準へ至りました。

直近の合格基準の変更としては、第115回から第116回にかけて領域の区分が変更になりました。

第115回から第116回にかけて領域の区分が変更

この変更の背景としては、より各分野を横断的に理解しているジェネラリスト的な歯科医師を選別したい、という方針が反映されたことだと考えています。

たとえば、第115回までの領域Bにおいては、小児は苦手だけど矯正が得意な人は、小児での失点を矯正でカバーすることで合格基準をクリアできる可能性がありましたが、第116回以降の領域Bでは、各論の全ての範囲を満遍なく得点しなければ合格基準をクリアできる確率は低くなります。

このように、特定の分野だけが得意!というような受験生よりも、苦手分野をしっかりと伸ばすことができた受験生が合格できるような試験制度に変わったといえます。

また、参考までに過去(第111回まで)には「禁忌肢」という合格基準が採用されていたことを紹介しておきます。

禁忌肢(きんきし)とは、その選択肢を選ぶと即不合格とされる選択肢のことを指します。

この禁忌肢が採用されていた背景には、医療現場において、目の前の患者の生死に関わるような判断をしなければならない場合に、明らかに間違った選択をとることがあってはいけないという理由からです。

しかしながら、仮にほとんどの問題を正答できていた優秀な受験生がいたとして、たまたまマーク位置がずれてしまい禁忌肢を選んでしまったなどの偶発的な要因で、そのような優秀な受験生が排除されるべきでないという考えのもとに、この禁忌肢の合格基準は廃止されたという経緯があります。

確かに、どの問題に禁忌肢が含まれているか分からない状態では余計なプレッシャーがかかってしまい、頭を落ち着かせて問題を解くことができなくなる可能性もあるので、この廃止は受験生にとっては非常に助かる変更点ともいえますね。

 2章:将来想定される試験制度の変更点

将来想定される試験制度の変更点

ここでは、将来的に想定される変更点を簡単に紹介していきます。

近年の歯科医師国家試験では4〜5年に一回、出題基準を含む試験制度が改訂される傾向にあります。

直近では2023年1月実施の第116回において改訂がなされたので、次の改訂は早くて2026年の第119回と予想されています。

現在歯学部1〜2年生の方は、自分が受ける年度の試験ではこのような変化があるかもしれないということを頭の片隅で覚えておくだけでも、これからの勉強にプラスに働く可能性がありますので、ぜひ読んでみてください。

2-1:合格者数の削減

試験制度の変更で一番大きなものといえるのは、「合格者数の削減」です。

歯科医師国家試験の合格者の削減は、前もってアナウンスされるものではなく、あくまで合格発表の当日までわからないことが大きな特徴です。

たとえば、過去10年間の合格者推移を見ていくと、

過去10年間の合格者推移

第106回から第107回にかけて突如として400名削減されて以降、現在の2,000名前後の合格者数となりました。

ちなみに、この変更で受験者数の母数は変わっていないにもかかわらず合格者数が減らされたことで、合格率は71.2%から63.3%まで一気に8%ほど下落しています。

また、2010年には東京歯科保険医協会が、将来的に新規参入歯科医師を1,200名まで削減することを提言しているように、今後も突如として合格者数が削減されることが大いにありえる状況といえるでしょう。

したがって、第116回の受験生や来年以降の受験に臨む歯学部生は、安全マージンを考えて少なくとも模試の全国順位1,000番台前半を安定して狙えるように、計画的な勉強を行っていく必要があります。

 2-2:出題基準(ブループリント)の改訂

近年の歯科医師国家試験では、4〜5年に一度出題基準が改訂される傾向にあり、直近では第116回の改訂された出題基準が2022年3月末に公表されているように、改訂される場合の具体的な出題基準は試験の約10ヶ月ほど前に公表されます。

もし、自分の受ける試験が改訂年度にあたった場合は、これまでの過去問だけでなく新しい出題基準に合わせた対策をしっかりと練った上で1年間勉強していく必要があります。

その際には、ブループリントと呼ばれる「歯科医師国家試験設計表」を隅々まで目を通して理解しておくことが重要です。

※「ブループリント(歯科医師国家試験設計表)」とは、試験委員が出題に際して準拠する基準(ガイドライン)の各項目の出題割合を示したものとその具体的な内容です。

ちなみに、第116回試験では、

  • 和漢薬を服用する高齢者や全身疾患を持つ者等への対応
  • 医療のグローバル化に伴う国際保健

についての出題内容が追加されることが公表されました。

今後の出題基準の改訂の方向性としては、今回の改訂で和漢薬や全身疾患といった歯科領域に限らない医科領域からの出題が増えたことのように、今後はより高度な医科歯科連携の知識を問う出題が増えていくと予想されます。

2-3:多浪生向けの対応(受験回数制限など)

将来的な制度の大きな変化点として、かねてから継続的に検討されている多浪生向けの以下2つの制度の導入が予想されています。

①受験回数への制限
②臨床能力を測る仕組みの導入

①の受験回数への制限については、現時点では多浪生(多数回受験者)が新卒者と比べて臨床歯科研修医としての能力に問題があるといった事実が確認できていないことから導入は見送られています。

しかしながら、より高い質の歯科医師を選別するという方針に伴って、合格者数の削減と同時もしくはその前後のタイミングで導入される可能性があるため、現時点で既に多浪生の方は今回で何としてでも受かるという覚悟が必要です。

②臨床能力を測る仕組みの導入については、臨床実習を終えてから長期間が経過している受験生の臨床能力について不安視する意見があることから、検討事項とされている内容です。

具体的には、通常は大学5年次の臨床実習前に実施される「共用試験臨床実習前 OSCE*」や 臨床実習後の試験である「Post-CC PX*」が多浪生を対象に課される可能性があります。

※共用試験臨床実習前 OSCE(通称 オスキー):模擬患者や模型を使用して、医療面接や手技能力を評価する試験。
※Post-CC PX(診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験):臨床実習中/終了後に行われる臨床実地試験(CPX)及び一斉技能試験(CSX)

3章:合格基準を正しく理解することが合格の鍵

合格基準を正しく理解することが合格の鍵 

ここまで読んだ方の中には、

「合格基準と将来的な制度変更は理解できたけど、実際の勉強にどう活かせば良いの?」

と思われている方もいると思います。

お気づきのように、合格基準をただ知っているだけでは合格に近づくことはできません。

合格基準とはあくまで全員に公平に与えられた「国家試験というゲーム」のルールであり、そこから何を読み解いて実際の行動に移せるかが非常に重要なのです。

そこで、この章では、合格基準を正しく理解した上で、実際の勉強プランや具体的な勉強方法に落とし込むために役立つ内容をお伝えしていきます。

3-1:時間配分と配点を把握する

これから受験勉強を始めるという場合や、過去問を実際に解く上で必ず知っておいて欲しいことが「時間配分」と「配点」への意識です。

これまでの大学受験や定期試験では、あまり時間配分を意識してこなかった、という人もいるかもしれません。

しかし、毎年実に多くの歯科国試受験生が、

「見直しする時間がなかった…」
「〇〇に時間を取られすぎてしまった…」

というように、国試終了後に後悔の念に駆られているのをご存知でしょうか?

そのため、まず何よりも意識しなくてはならない「時間配分」について具体的に説明します。

歯科医師国家試験は2日にわたって行われまれ、試験時間は午前と午後でそれぞれ2時間15分ずつ、合計9時間となります。

2時間15分のそれぞれの試験時間の中では、

・必修問題:20問
・一般問題:45問
・臨床実地問題:25問

の90問が出題されます。

最後10分間を解けなかった問題やケアレスミスの見直し、マークチェックの時間に充てるとすると、残りは2時間5分(7,500秒)となります。

このことから少なくとも、

必修問題と一般問題は1問当たり60秒
臨床実地問題は1問当たり約2分30秒(150秒)

のペースで解いていく必要があります。

「普段から過去問をこのペースで解けているよ」という方も、全てが初見の問題で合格のプレッシャーがかかっているという条件の中では、普段からこれ以上のペースで解く練習をしていなければ、本番で同じようなスピードで解くことは難しいでしょう。

なお、必修問題は10秒とかからず即答できることもありますが、不適切問題になるような難問に当たった際には時間が取られる可能性もあり得るため要注意です。

そして、「配点」については、臨床実地問題を1問落とすことは、必修・一般を3問落とすこととイコールということを意識しましょう。

当たり前だと思うかもしれませんが、意外と試験本番では計算問題の再計算などに時間が取られてしまい、臨床実地問題の見直しを後回しにしてしまった結果、3点を落としてしまうことが多いに起こり得るのです。

また、特に第116回以降は必修問題に「X2タイプ(選択肢の中から2つ選べ)」が採用されることから、過去問ではあまり意識することのなかった必修問題の見直しに時間が取られる可能性があります。

そのような場合でも「配点」を意識した上で、どの問題から見直していくかをしっかり考えながら試験問題に立ち向かっていきましょう。

3-2:まずは得意科目を勉強して苦手科目をカバーする

毎日の勉強をしていく中で「苦手科目をなんとかして克服したい」と焦っている方も多いのではないのでしょうか?

そのような人にお伝えしたいのが、まずは得意科目を優先的に勉強して、得点力の向上と科目間の横断的な知識を身につけることです。

これまで領域Bと領域Cのどちらかで1点足りず落ちてしまったような不運な人は、第116回以降では各論全てが領域Bに集約されるため合格できる確率が高まっています。

したがって、苦手科目の克服だけに勉強時間を割くのではなく、得意科目の得点力をしっかりと上げておくことで、本番での「あと1点足らなかった…」をカバーできる可能性があるのです。

また、得意科目を優先して勉強することのメリットはそれだけではありません。

歯科医師国家試験の対策は、科目間で共通する知識の理解を深めていくことが重要であり、今後もそのような出題が増えていく傾向にあるとされています。

そこで、まず勉強に対する抵抗が少ない得意科目から、科目間の横断的な知識を意識した勉強をしていくことで、のちに苦手科目に取り組んだ際に、すんなりと理解しやすくなる可能性が高まります。

以上から、「得意科目を勉強する」という話はとてもシンプルですが、受験勉強においてはこのような優先順位の小さな積み重ねが、1年間にわたれば大きな違いとなってきますので、日頃からこれらを意識して取り組むようにしましょう。

3-3:模試結果は見るべきポイントを決めて活用する

模試は、初見の問題を時間内に解く練習として、また実際に本番さながらの雰囲気の中で問題を解くとても良い機会です。

ですが、模試の本当の価値は、「模試結果」を有効活用した場合に発揮されるのです。

ここでは、模試結果で見るべきポイントと、そうでないポイントを説明していきますので、実際にあなたが模試を受ける際や、模試結果が手元に届いた際にはぜひ参考にしてください。

■見るべきポイント
・領域別・科目別の全国平均との比較
1章でも説明した通り、領域A・Bは相対基準が採用されていますので、自分の相対的な立ち位置を把握しておくことが重要です。
まずは、領域別・科目別の全国平均と自分の得点率を比較し、自分の苦手分野と相対的な位置を把握することに努めましょう。

・正答率が80%以上の問題の復習
全国平均正答率が高い問題(易問)は、今後は落とさないように必ず復習することが大切です。正答率80%以上をひとつの基準として優先順位付けを行いながら復習に取り組みましょう。

・ケアレスミスの発生箇所・原因の特定
重複マークや未記入、マーキング不良が起きている場合は、本番でも同じケアレスミスをしてしまう可能性がありますので、なぜそうなってしまったかを必ず再発防止策を考えてください。

・模試解説書の活用
各問題の正解・不正解だけでなく、各選択肢の解説を読んで、知識がどれくらい定着しているかを把握しましょう。
また解説書の付録でその周辺知識も合わせて復習しておくことも重要です。

■注目すべきでないポイント
・全国順位・学内順位
模試結果で真っ先に気になってしまうのが全国順位です。(現役生の場合は学内順位も)
しかし、特に早い段階の全国模試は受験者数が少ないため、正確な順位は分からないため、順位で一喜一憂することは全くの無意味です。
順位を見る際は、受験者数3,000人に換算した上であくまでも参考程度に留めるようにしてください。

・必修問題の全国平均正答率
基礎科目を中心に勉強してきた人は、8月末もしくは9月頭ごろの第1回目の全国模試を受けると、どうしても必修問題の結果が気になってしまう傾向があります。
しかし、絶対基準が採用されている必修問題の全国平均正答率は、あまり良い判断材料にはなりません。
また、大手予備校2校の全国模試は本番と比べて必修問題がやや難しく設定されていますので、順位・正答率よりも問題と各選択肢の復習に重点を置きましょう。

このように、模試結果は見るべきポイントを決めた上で自分の立ち位置を確認し、復習の材料といて有効活用していくことで、今後の戦略に繋がりますので、以上のポイントをぜひ参考にしてください。

4章:【親御様向け】模試結果・合格発表・成績に関する悩みへの対処法

当記事を読まれた親御様は、

「模試結果がどうだったのか気になる…」
「国試が終わって合格できるかどうか心配…」
「昨年は落ちてしまったけど今年は大丈夫?」

などと悩まれることもあるのではないでしょうか。

親御様が合格基準を理解されると、ついお子様の成績について不安になってしまう場合もあると思います。

そのような際は、ぜひこの章で紹介していることを参考にして、お子様との接し方などに取り入れてみてください。

4-1:模試の成績は気にしない

受験生の模試は、多い人は1年間に10回以上受けることもあるので、模試が終わるたびについつい自分のお子様の成績が気になってしまいますよね。

その際、自発的に模試の話をしてこないお子様に対しては、親御様から模試結果の報告を求めるのは避けた方が良いです。

その理由としては、

①親にがっかりして欲しくないと思って、つい見栄を張った模試結果を伝えてしまう

②親御様の模試結果への理解が浅い場合は、順位に口を出してしまう可能性がある

というように、その後のお子様の勉強に対して、プラスの影響があまりないと想定されるためです。

したがって、模試結果はお子様側から積極的に話してきた場合を除き、親御様からはなるべく聞かないようにしてあげた方が良いでしょう。

4-2:合格発表日までは自己採点結果を聞かない

国試本番がようやく終わると、お子様の自己採点結果をいち早く聞きたい!と思われるでしょう。

もし、お子様の国試結果が上位1,000番以内もしくは下から数えて700番以内の場合は、自己採点での合否判定は当たっている可能性が高いです。

しかし例年、削除問題や不適切問題等が少なくとも数点分はあり、かつボーダーライン付近に最も多くの受験生が分布しているため、合格発表日まで自分が合格だと思っていても不合格になってしまう可能性やその逆のパターンも多いにあり得ます。

そのため、お子様がなかなか国試の結果を言い出さないなど、合否ライン付近にいると思われるような場合は、自己採点結果に家族が一喜一憂しないように、合格発表日までは気にすることを控えておいた方が賢明です。

 4-3:年2回(4月・9月)はプロに相談を

歯科医師国家試験は「家族の戦い」とも言える試験です。

お子様が合格するためにはお子様本人の頑張りだけでなく、親御様の理解や適切なサポートが欠かせません。

しかし、お子様本人は悩み事があったとしても周りの受験生と話したりすることで気が晴れることがある一方で、基本的に親御様は悩みを抱えながらお子様を日々見守ることしかできません。

そんな親御様に向けて私が推奨するのは、年2回は親御様だけもしくはお子様を含めて、受験のプロに相談してみることです。

春の予備校入学シーズンには、さまざまな予備校・塾で三者面談などが頻繁に行われているため、親御様がお子様の実際の成績などに対する詳しいアドバイスを聞く機会が得やすいです。

その後、1年間の受験生活の半ばとなる9月には第1回目の全国模試が行われ、お子様の最新の成績が判明していますので、そのタイミングで4月時点の成績との比較などをプロに行ってもらうことが、その後のラストスパートをかける上でとても役に立ちます。

しかし、9月ごろになると、三者面談を行うことは途中入学などのきっかけがない限りは難しくなってきますので、その辺りの相談ができる相手を事前に探しておきましょう。

当サイト「歯科国試ドットコム」を運営するオンライン個別指導塾「60日合格塾」では、

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  まとめ:勉強法に迷ったら「歯科国試ドットコム」に相談を

いかがでしたか?

今回の内容をまとめます。

第116回以降の歯科医師国家試験は、

  • 必修問題は80%以上の正答率(絶対基準)
  • 領域A(=総論)・領域B(=各論)はそれぞれの平均点と標準偏差を用いて設けられた基準点以上の得点(相対基準)

という合格基準となります。

将来的な試験制度の変更点としては、

  • 合格者数の削減(今後1,200名となる可能性も)
  • 出題基準の改訂(医科歯科連携の出題増?)
  • 多浪生向けの対応
    ①    受験回数への制限
    ②    臨床能力を測る仕組みの導入

が想定されています。

合格基準を正しく理解し実際の行動に移すためには、

①時間配分と配点を把握する
・必修/一般は1問当たり60秒、臨床実地は1問当たり約2分30秒
・臨床実地問題1問は必修・一般問題3問とイコール

※第116回より必修問題に「X2タイプ」が採用されるため見直しに時間がかかる可能性あり

②得意科目で得点力と科目間の横断的な知識を身に付ける

③模試結果は見るべきポイントを絞って活用する
・領域・科目別の全国平均との比較
・正答率80%以上の問題の復習
・ケアレスミスの発生原因の特定
・模試解説書の活用

を意識した取り組みを行なっていきましょう。

またお子様の成績が気になってしまう親御様は

  • 模試結果はなるべく親御様から聞かないようにする
  • 国試の自己採点結果は合格発表日までは気に留めない
  • 年2回(4月・9月)はプロに相談する

の3つをぜひ参考にしてください。

最後に、もしあなたが今年の歯科医師国家試験に不安を頂いている場合は、できるだけ早い段階で「歯科国試ドットコム」を運営するオンライン個別指導塾「60日合格塾」にご相談ください。

60日合格塾は、

  • 国家試験に精通したプロの現役歯科医師
  • 受験生だけでなく、親御様の相談も可能
  • 電話・メール・LINE・Zoomなど各種対応

といった特徴のもと、無料相談を行っております。

60日合格塾の詳細をもっと知りたい場合は、こちらのサイトをぜひご覧ください。

【60日合格塾】

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この記事の内容を参考に、今すぐ行動を開始していきましょう。

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AUTHOR
著者紹介

著者 和気正和

歯科医師国家試験
60日合格塾・塾長
歯科医師 和氣正和

当メディア「歯科国試ドットコム」は、歯科医師国家試験の受験生が確実に合格できるように、受験生本人と親御様向けに情報提供するメディアです。

もしあなたが、歯科医師国家試験に対して不安を抱えている場合、ぜひ当メディアの記事を読んで知識やスキルを身に付け、合格に向けた正しい努力ができることを願っています。

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